11月12日、Zabbixの新メジャーバージョンとなるZabbix 2.2をリリースしました。このバージョンではVMware仮想環境の監視機能と、Windows WMIサポートなどの新機能が追加されています。
Zabbix 2.2の新機能の一覧はZabbixドキュメントのWhat's New 2.2.0のページに記載されています。
OSC Kyotoで私が講演した「Zabbix 2.2の新機能とオフィシャルサービスの紹介」の資料はSlideShareで公開していますので、こちらもどうぞ。
あとはZabbix認定パートナーのSRA OSSさんがZabbix 2.2の評価レポートを公開されています。新機能を使ううえでポイントとなるところがまとまっています。
Zabbix 2.2では100以上の新機能と機能改善を行っています。新たな監視機能はもちろん、パフォーマンスも一層向上し、1台の監視サーバーから数万オーダーの監視対象を監視できるようになりました。これまで世界中の大規模システムのカスタマーから寄せられた具体的な報告をベースに改善を行ってきているため、そのパフォーマンス改善はすでに実証済みのものがほとんどです。
1つ前のメジャーバージョンとなるZabbix 2.0リリース以降、世界中のカスタマーやパートナー、コミュニティからおよそ3,000にのぼる機能修正、機能追加要望がありました。Zabbix 2.2リリースまでの1年半の間にそのうちおよそ2,000件の修正、コミット数にして12,000コミットを達成することができました。
外からわからない部分でも内部的には大きく作り替えられているところもあり、大小さまざまな点で改善が行われています。Zabbix 2.2のRPMパッケージ、Debパッケージもすでに公開していますので、ぜひ使ってみてください。yum/aptを使って簡単にインストールできます。インストールなどはドキュメントをご参考ください。
Zabbix 2.2のリリースまでの道のり
本来はZabbix 2.0のリリースから1年後の今年5月に2.2をリリース予定だったのですが、いくつか大きな機能の追加があり、今回は1年リリースは達成できませんでした。長い間待っていただいたユーザーの方々、大変お待たせしました。
今回はZabbix Japan設立後初、かつオフィシャルRPM/Debパッケージを公開してからも初のメジャーバージョンのリリースということもあり、いろいろと準備に奔走しました。リリースは予定より半年遅れたものの、私個人やZabbix Japanとしては多少時間的に余裕があって逆に良かったのかもしれません。
9月にはZabbixパートナー会でZabbix 2.2の共同検証を行い、細かな問題点を洗い出すことができましたし、この時点でZabbix認定パートナーとは2.2の細かな改善点や修正点も共有でき、Zabbix 2.2の活用に向けてもパートナー含め準備を整えることができました。
Zabbix 2.2のリリース前にはBug Squashing Eventを開催し、コミュニティユーザーと共同でRC前の1日の間に159コミット、37件のバグ修正を行いました。クオリティもこれまでのリリースに比べて向上しています。イベント前後でWebインターフェースの翻訳も完了させることができ、日本語のインターフェースは翻訳率100%に1番乗りでした。
今回はこのイベント自体も初開催だったためアナウンスが十分ではなかったこともあり、私も参加していた夕方以降(日本時間)で知っている限り、残念ながら日本からの参加や報告はなかったように思います。次回2.4のときも同じようにリリース前のクオリティ向上のためのイベントが開催されると思いますので、ぜひ参加してみてください。英語で海外のエンジニアとコミュニケーションできる絶好のチャンスですし、不安なところがあればサポートしたいと思います。
Bug Squashing Event中、隣の席で参加いただいた@qryuuさん、あとインターフェースの日本語訳などを細かく改善していただいた@atanakaさん、どうもありがとうございました!
次の2.4でも再度、1年後のリリースを目指します。以前よりも社内でのワークフローの流れも良くなり、開発スピードは上がってきているので、次回は達成できるのではないかと思っています。期待して待っていてください!
旧バージョンからのアップグレード
日本ではまだZabbix 1.8を利用されているユーザーも多いのではないかと思います。Zabbix 2.0ではローレベルディスカバリによるアイテム/トリガー/グラフ設定の自動作成や、SNMPトラップの設定方法/パフォーマンスの改善、トリガーのメモリキャッシュによるZabbixサーバーのパフォーマンス改善など、Zabbix 2.2では加えてVMware監視機能、Web監視の改善、WMIサポート、さらなるパフォーマンス改善などさまざまな機能追加と改善が行われています。
Zabbix 2.0/2.2にアップグレードすると監視のパフォーマンスが改善されることによってより多くの監視設定ができるようになり、設定管理の手間も大幅に改善されます。ぜひこれを機会にアップグレードを検討してみてください。
ただ、残念ながら1.8以前のバージョンから2.0以降にアップグレードするためには、Zabbixデータベースの過去の監視データが保存されている領域の変換処理が必要となり、多くのデータが保存されている場合は変換処理に数時間を要します。その間、Zabbixサーバーは停止する必要が出てきてしまいます。(この機能改善はZabbix 1.8の時代にNTTコムテクノロジーさんからの協力で行われたものですので、ZABICOM 1.8を使われている場合はアップグレードの時間はかかりません。)
Zabbix社では世界中の大規模ユーザーのサポートを行う中で、1.8以前から2.0以降へ、監視の停止時間を最大で数分までに抑えてアップグレードするノウハウがあり、Zabbixパートナー会で日本国内のZabbix認定パートナーにはその技術をお伝えしてあります。
Zabbix 2.2リリースにあわせて、Zabbix 2.0/2.2ファストアップグレードサービスも開始しますので、アップグレードしたいけれども不安がある場合はご活用ください。
Zabbix 2.4に向けて
社内でひたすらバグ修正と機能追加を行っている開発チーム、世界中のカスタマーやパートナーからのサポートに答えつつ、コミュニティの対応も行っているサポートチームにひとまずお疲れさまと言いたいところですが、これからZabbix社では次の2.4リリースに向けて議論を行っていきます。
日本国内から要望として多く上がっている機能については、次の2.4リリースに追加すべく私から社内でpushしていきますので、何か要望がある方はイベントなどで私を捕まえていただくとか、twitterで@kodai74もしくは@zabbix_jp宛にメッセージを送るか、公式サポートを利用いただいているユーザー様はパートナー経由でぜひ意見を上げてください。Zabbixはこれまで、ユーザーからの意見を着実に反映して機能強化/改善を行ってきています。
Zabbix 2.4に必ず追加して欲しいという機能があれば、開発サービスも提供しています。2.2で追加されたVMware監視機能、Web監視機能の改善などは、世界中のユーザーから開発サービスを利用して頂いて実現した機能です。Zabbixを個別カスタマイズするくらいなら、開発サービスを利用した方がコミュニティへの還元と、以降のメンテナンスコストの大幅削減を実現できると思います。
最後に
とにもかくにも、Zabbixは世界中の協力的なコミュニティ、ユーザー、カスタマー、パートナーに支えられて日々、順調に開発が進んでいます。引き続き、ご期待&ご協力をよろしくお願いします!